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アーカイブ: 2008/03

発言の自由

前エントリーで採り上げた「人民報日本語版」にあった中国最高人民法院の張軍副院長の有り難いお話。

中国国民は法律制度の規範の下、自分の意見を自由に発言する権利を持っている。
これは疑う余地のないことだ。
政府への提案や国への批判的な意見を含め、自由な発言の権利が憲法や法律に十分保障されている。


で、その証拠写真。
言論の自由はなんて素晴らしいんだ!

なるほど! 確かに発言の自由がある。
有り難くて涙が出そうだ。

法律制度の規範の下』がミソのようですね。

でも、わが国マスコミの”報道の自由”とやらには制限を掛けたくなります。

マスメディアは「暴動」ではなく、「抵抗運動」若しくは「独立運動」ときちんと言いなさい!
マスメディアはその「抵抗運動」が何故?「暴動」にまで発展したのかを、きちんと言いなさい!
マスメディアは”チベット人がまるで富の分配の不公平さだけに怒っている”かのような報道は止めなさい!
マスメディアは西蔵鉄道がインドを睨む軍事鉄道であることと漢族流入によるチベット浄化が目的で作られたことをきちんと言いなさい!
カトー工作員は直ちに辞めなさい!!

今日は忙しいので手抜きです。すいません。



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チベット人の”正当”かつ”正統”な抗議活動について


NHKをはじめとした日本のメディアが、やっと、中共に対するチベット人の抗議活動とその弾圧ぶりを報道し始めましたね。国際社会が一連の事件を”中共による不当な弾圧行動”と完全に見定めるまで適度に沈黙してたんでしょう。
何ともご立派な”ジャーナリズム”ぶりです。

メディアが現象として”チベット暴動(riot)”と呼ぶのは致し方ないとは云え、この事件はチベット人の”正当”かつ”正統”な抗議活動(protests)であることを念頭に置いた報道に心掛けてもらいたいと思いますけど、まぁ無理かな?

ダライ・ラマ猊下は1999年、CNNのラリー・キングのインタビューに答えて、中共によるチベット併合は”culture(cultural) genocide(文化的大量殺戮)”にまで及んでいると答えていました(ダライラマ法王ニューミレニアムインタビュー)。
こうしたダライ・ラマ猊下の言説に対して、生温いという批判があるようです。
確かに私もそう思いますが、我々一般人と違ってお立場のある猊下のこと、本音を公言してしまえば、更に締め付けが厳しくなって物理的に葬られてしまう可能性だってあります。
言外の意味を汲み取るべきかと思います。
そう云えば、”今回の抗議活動は生温い猊下に反発した人達が主導して行っている”と述べていた人をネット上で見かけたのですが、何方のブログだったのか、今ちょっと思い出せません。

しかし、この”cultural genocide”と云うワードは直接的な人間への虐殺を指しているわけではありませんが、ある意味、単に”genocide”と言うよりも、”侵略”というものの本質(恐ろしさ)を形容するには好適な言葉と言えます。
被侵略国の文化や伝統を根本から否定・破壊し、侵略国のそれを強要し、同化させることが”侵略”の本質だとすれば、中共はチベットを、まさしく”侵略”してます。しかも、民族浄化のおまけ付きで。

これに対して、チベット人(僧侶)が自由な言論や自治権を求めて、あくまで平和的に”protest”を行うことは当然の権利であり、それを無慈悲に弾圧・統制する中国と云う国は本当に恐ろしい国家です。
参照:
ペマ・ギャルボ氏ブログ緊急声明 3・15ラサ抗議行動への武力弾圧について

また、至極当然に北京五輪のボイコット話が出るわけですけど、当のIOC ジャック・ロゲ会長・・・アスリートを単に傷付けるだけとしてボイコットを否定したそうですOlympics chief rejects boycott over Tibet)。参加選手の精神的ショックに上手いこと託(かこつ)けた狡賢い理由を考えたものですが、こんな非人道国家が開催する五輪に、悲劇に目を瞑って出ることの方が余程、不名誉なことだと思うんですがね。
政治とスポーツは切り離して考えよ!なんて言説、一体誰が言いだしたんでしょうか?

いやはや、その中国様ですけど、一光年くらいはあろうかと思われる分厚い面の皮でこんなこと言ってるんですね。

ラサではこのほど、ごく少数の人間が殴る・壊す・奪う・焼くなどの破壊活動を行い、人民大衆の生命や財産の安全に危害が加えられるという事件が起こった。これがダライラマ集団の組織的で計画的なたくらみであることを示す証拠は十分あり、チベット各民族の民衆の間でも強い怒りと厳しい非難を引き起こしている。
チベット自治区責任者、ラサでの騒乱についてコメント:人民報日本語版より)

引き続いて、同じ口が

中国憲法には国民の言論の自由を含む国民の権利に関する20数項目が明確に規定されている中国国民には意見を自由に発言する権利がある:人民報日本語版より)

だそうです。
我々が今まで見てきたこと、聞いてきたこと、全てイリュージョンだそうです、あ~そうですか!?
いや待てよ、「国民の言論の自由」・・・と云うことは、チベット人は国民ではないな、別に「他人の民事上の権利を侵害」したわけでもないわけで。
と云うわけで、中国共産党は統治権を何ら有しないチベットという別の国の人間を弾圧していることを認めてしまいました。

言ってて悲しくなるような皮肉はさておき、去年、私は今や”はてサ”のアイドル的存在になられた”ワシさんブログ”で妙な議論に巻き込まれました。そこで、私のチベットに対する認識を述べてますので、それを紹介させていただきます。

ワシさんが以下のようなエントリーをされました。
【中国】06年チベット経済が大幅成長、民間投資73%増

まぁこれは、チベット経済が中国様のお蔭で成長したことを述べた記事に対してツッコミを入れたエントリーだったのですが、それに対し、”通りすがりの日本人”と自称する変な人が「それって、昔の日本が朝鮮に対してやったことと同じだよね」と、いわゆる因縁を付けてきたわけです。この手の因縁の付け方は日本”サヨク”の常套手段です。
それで、結構なコメント数でもって、ケンケンガクガクの言い合いになったわけです。
私も少しばかりの参戦をしました。

日韓併合と中共の言うチベット併合の、何処が違うのか?
この違いこそが、”侵略”と”併合”の本質的差異でしょう。
日韓併合を非難することはどうぞおやりなさい、その代わり、単にネット右翼的言論を馬鹿にする為だけに安易なメタ化(相対化)でもって、中共批判を封殺するような下らない言説を撒き散らすな!と言いたかったわけです。
以下、当時の愚考を、ちょっと長いですけど引用して終わりにします。

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それで私の意見ですが、やはりチベット侵略と過去の日韓併合を同列に語るのには無理があるかと思います。
朝鮮側から観た日韓併合の強制性や民族主義の否定強要についての歴史観を日本人としてあれこれ云う資格はないと思いますが、その当時の国際法に照らし合わせれば、1910年の「韓国併合についての日韓条約」は合法との見方が多勢を占めていることはご存じのことと思います。
貴方の仰るように、朝鮮も日清戦争に勝利した日本が下関条約によって清国に独立を認めさせておいて、最終的には併合してしまった経緯については双方言い分があるかとは思いますが、その併合自体に国際法的違法性はないと思っております。
ところが、中共の云うチベット解放については、その支配の根拠となる1951年の「17ヶ条協定」調印の際に中共は明白な国際法違反をやらかしてますね。北京に派遣されたチベット代表団は軟禁状態に置かれ、脅迫と恫喝の下に調印を強制されたことはよく知られた事です。こうした国の代表者を強制によって締結された条約は、国際慣習法から観て明らかに無効であり、それを明文化した「条約法に関するウィーン条約」でも禁止された行為です(これは事後法の適用(遡及)になりますが)。

国際法的規則に則って行った日韓併合とそれを無視して強引に行ったチベット解放とは、この一点のみを観ても異なるレイヤーのお話ではないでしょうか。 勿論、日本の朝鮮に対する行為に人道面や倫理面、または民族自決主義的観点で批判されれば、聞く耳は持っているつもりです。
また、これは大いに異論があろうかとは思いますが、日韓併合は良くも悪くも過ぎ去った過去であるのに対し、チベット問題はその過去をよく知り得る立場である中共が、敢えて行っている現在進行形の行為であることは、時系列的に観て非常に重要なポイントであると思ってます。だからこそ、中共の行為を糾弾する必要があるわけです。

また、貴方の仰ったチベットの虐殺人数のご意見について・・・
ワシさんの仰る虐殺数120万人はご存じのようにチベット亡命政府の発表でもあるわけで、その内訳もそのページに書いてあります(ここでは虐殺ではなく、きちんと死者数と書いてあります)。また、人口も600万人いたことが違うページに以下のように書いてありますね。

「1959年、チベットの人口は600万人であった。これは、チベットの国土が日本の6倍であるにも関わらず、人口は日本の20分の1であることを意味している。初期の近代歴史家は、チベット人口の大部分は「ラマ」(僧と尼)であったと述べている。正確なチベット公式記録によると、1959年には約59万9千人の僧と尼がチベットにいた。つまり、実際には僧と尼の数はチベット全人口の10%程度だったのである。」

確かに、最初にある1959年、600万人人口の大元の根拠が書いてありません。しかし、その後で、「初期の近代歴史家は、チベット人口の大部分は「ラマ」(僧と尼)であったと述べている。」と言っているわけで、これを仮に信ずるならば、貴方の仰る1931年の統計数字76万人はラマ以外の社会集団を包含していない可能性があるのですが、どうなんでしょうか?
それと同様に言われる1950年の推定人口百万についても、同年に中共政府がチベットに侵攻したときには、「300万チベット人を帝国主義者の弾圧より解放する為、又、中国西部国境線防衛強化の為、人民解放軍のチベット進軍を命令した」と中共自身が宣言してますよね。三倍の開きがありますけど、これを他の社会集団を含めた最低限の数字と観れば、まだこの当時の中共政府の方が良心的な数字を出しているように思われます。
これらを併せると、筆者自身は1950年時の人口は少なくとも100万人を大きく上回るチベット人がいたと考えております。

貴方は南京事件を例にとって中共の数に対する誇張や捏造を指摘しておられました。確かにその通りなんですけど、それを仰るなら、尚更、現在の中共政府の統計数字(2005年時点で人口274万人)も疑ってかかる必要があります。
まぁこうした数論争というのは南京事件でも散々やっているわけですが、恣意的な数字がどうしても入り込むのはお互い様な面がありますね。
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人権擁護法案反対国民集会と検閲?


標題の反対集会、会場に入りきれないほどの大盛況だったようで取り敢えず何よりでした。
要望書も六千超集まったとか。
準備期間が可成り短かったので、満身のネットの力を見せつけることが出来たかどうかは何とも言えませんが、消極的賛成派の議員さん達に向けて再考を促す切っ掛けになってくれたらと思います。現状で、産経日経がこの集会を採り上げてくれたようです。

以下に南京ペディア様が詳細な記事にして下さってます(写真もお借りします)。ご参照下さい。
【偽装・人権擁護法案に反対する国民集会】入りきれないほどの人が押しかけ大盛況
稲田朋美衆院議員
ところで、この集会にも参加しておられた稲田朋美衆院議員が”はてぶ”で叩かれているようです(現在、96ユーザーも付いてます)。
asahi.com:靖国映画「事前試写を」 自民議員が要求、全議員対象に - 社会

はてなブックマークは便利なので私もよく利用するんですけど、如何せん、色々と小言が書けてしまうのでイヤらしいものがあるんですね。
例によって”はてサ(はてな左翼)”連中が中心となって、やれ「事実上の検閲」だの、「中国と同じ」だの、散々な言われようです。
まぁ私は、この映画『靖国』をよく知らなかったので、カチンと来た頭を冷やしながらちょっと調べてみました。ざっとこんな感じです。

映画『靖国』の公式サイト映画『靖国』予告編(Media Player 1M)
靖国神社ドキュメンダリー映画の制作が初めて完成
アジアの真の平和と友好を促進
芸術文化振興基金 平成18年度助成対象活動の決定について
中国人監督が「靖国」映画制作

結果、
映画『プライド-運命の瞬間-』や『宣戦布告』が普通にTVで放映され、そして健全に批評され、かつ映画『南京の真実』をメディアが、立場がどうであれ黙殺しないできちんと報道するような真の公平性・多様性を認める社会になったのなら、まぁこうした意見に素直に頷いても良いかな?
と、彼らが云うところの自慰歴史観をもつ歴史修正主義者な私は思っちゃったわけであります。

歴史修正主義で思い出したのですが、こうした”はてぶ”に集うお歴々は日本の歴史修正主義には大変厳しい方々がお揃いなのですが、何故か?お隣の国々の同主義に対しては、差別を助長するとかイミフな屁理屈言って黙されるんですね、ホント不思議ですね。
少しは、オノレの「確証バイアス」とやらも考察せーよと。
そうじゃないと反駁されるのならば、そうじゃない証拠エントリーでもトラバして下さいな、そうじゃない普通の人だと認めさせていただきますので。

まぁしかし、冒頭で採り上げた人権擁護法が施行されたら、三条委員会による本当の『検閲』が始まっていくようなイヤな予感がする今日この頃。
いやいや、根拠の無いデマ飛ばしちゃいけないんでしたね、はてサの皆さん。
以後気を付けますわ。



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黄砂関連備忘録


今年もあの鬱陶しい黄砂の季節になってまいりました。
この3日には日本列島にも広範囲に飛来して日本の大気を汚してくれたわけです。とても春霞だなんて悠長なことは言ってられませんね。
黄砂は、英語で”Asian Dust”だの”Yellow Dust”だのと呼ばれるそうですけど、個人的にはChinese Poisonous Dust中国毒塵はたまた迷惑砂メイワクサと呼んでやります。

冗談はさておき、この黄砂の化学特性が年々凶悪になってきていることは皆さんもご承知のことだろうし、それが中国による人為汚染によるものであることも、これまたウェルノーンなこと。
以下、備忘録的に愚考を述べてみます。ですから、あまり面白くないと思います。

まず、環境省の黄砂問題検討会報告書(H17年)から、黄砂の物理・化学的性質について述べられた箇所を、長文ですけど、一応備忘録ですので引用しておきます(第2章、2.3. 物理・化学的性状)。

2.3. 物理・化学的性状
2.3.1. 物理性状
黄砂粒子の粒径についての最も古い測定としては、1920 年に中国で降塵を顕微鏡観察した結果が残されている。また、1934 年には、中国から日本にかけての詳細な調査が行われており、これによれば、黄砂粒子の粒径は全体として0.5~0.001mm の範囲であるが、中国、韓国、日本の順に小さくなり、八重山諸島では、0.05mm 以下となったことが報告されている。この種の観測は、光学顕微鏡を使ったものであり、検出限界以下の小さい粒径のものは観測できないので、それらについて議論はできない。

浮遊している大気エアロゾルへの関心は、1970 年代から急速に高まり、様々な条件下でエアロゾルの採集が行われた。一方で、黄砂への関心もそれにつれて高まり、氷晶核あるいは凝結核としての機能を知るために、鉱物学的研究が行われるようになった。1979 年に名古屋でアンダーセンサンプラーを用いて行われた結果は、1μm 以上の大きな粒子濃度が高く、ピーク粒径は4μm であった。通常見られないこの粒径の粒子は黄砂と考えられた。この試料を、X 線回折装置により鉱物組成を調べた結果、砂塵中の石英や長石の造岩鉱物、更に雲母(イライト)、カオリナイト、緑泥石などの粘土鉱物が多く、いずれも直径1.0μm~30μm の粒径範囲に分布し、4μm 付近に最多直径を示す一山の粒度分布をもつということが判った。粘土鉱物が2μm 以下の土壌構成粒子中に含まれる特性をもつことを考えると、大気中の黄砂粒子は、その多くが純粋な鉱物粒子から成るのではなく、粘土鉱物の構成粒子が相互に凝集したものか、あるいは石英や長石などの粒度の粗い粒子の表面に粘土鉱物が付着した粒子から成るであろうと推定される(石坂 1991)。

中国の黄砂発生源地域であるタクラマカン砂漠でいわゆるダストフロントのダストを40μm から600μm の32 粒径クラスに分級して計測した場合、地表面で球と仮定した場合の相当粒径の平均は103μm で最頻値が70~80μm と報告されている(Yamada 他 2002)。このように、黄砂粒子あるいは鉱物・土壌粒子のサイズ分布に関する知見は極めて限られていたが、最近の活発な研究を通して、中国東部沿岸地域、韓国、日本等で多くの知見が得られている。また、静穏時ではあるが、タクラマカン砂漠上空での観測が行われ、結果が公表されている。

2.3.2. 化学性状
日本上空に飛来する黄砂粒子の鉱物組成には、主要鉱物として、石英、長石、雲母(イライト)、緑泥石、カオリナイト、方解石、石膏、カルサイト、硫酸アンモニウムなどを含んでいる。これを中国の土壌の性質と比較すると、砂漠土壌には石膏を含むものがしばしば見られることから、黄砂が砂漠土壌に由来していると考えられていた(石坂 1991)。

黄砂粒子が大気中を浮遊する間に周辺の大気中のガスと様々な反応をする可能性が、飛行機観測によって指摘されて以来(Iwasaka 他 1988)、多くの関心を集めるようになっている。表面反応は極めて複雑なプロセスであり、未解決の問題が多い。東アジアの環境に関わる物質循環に影響する可能性が指摘され、非常に初歩的な形ではあるが、このプロセスを数値モデルに取り込みシミュレーションが試みられている(Denterner 他 1996)。

また、室内実験では、湿度が大きな役割を果たしていると推察される結果が多く出されている(Mori 他 1998a)。この例として、黄砂粒子と硫酸アンモニウム粒子が湿った大気中で凝集し反応する機構が挙げられている。中国の産業活動に伴う硫黄分を含んだ排気は、硫酸アンモニウムとして大気中に浮遊する。これと、土壌起源の炭酸カルシウム(CaCO3)が反応し、石膏となる可能性が示唆されている。実験では、数日で中間生成物のコクタイトを生成し、最終的には石膏が生成された。

また、黄砂粒子表面でのSO2 ガスの直接酸化捕捉機構を調べた室内実験(Sakamoto 他 2004)では、硫酸塩生成までの過程は乾燥状態ではオゾンの関与が大きく、高湿度条件下では粒子表面の水分含量に左右されることが明らかになっている。

黄砂の飛来中に降水があると、降水のpH は7前後と高くなりアルカリ性を示す場合が多いが、これはカルシウムイオン(Ca2+)濃度の増加に因る。黄砂中の主要鉱物であるカルサイト(炭酸カルシウム)が雨水中の過剰な酸性イオン種(硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン)濃度に対応して中和反応的に溶け出したためである(鶴田 1991、Nishikawa 他 2000)。また、前述のように日本に飛来した黄砂は硫酸イオンを粒子表面に集積している。その硫酸イオンも降水に溶け出しやすく、降水中の硫酸イオン量の増加に寄与しているものと考えられている。

中国北部の表層土の土壌の化学分析を行った結果、ケイ素(Si)の他、長石や粘土鉱物に由来するアルミニウム(Al)、方解石などに由来するカルシウム(Ca)、イライトなどに由来するカリウム(K)が多く含まれるなどの特徴があった。日本各地の表層土の化学組成と比較すると、日本の表層土では、Ca 含有量が低く、特にCa/Al 比では、中国の0.6~1.3 に比較して日本では0.2 以下と低く、一般的にはCa 含有量の高いことが黄砂粒子の特徴であることを示している。

黄砂時にアンダーセンサンプラーによって粒径0.045~30.5μmの粒子状物質を採取した試料の化学成分分析の結果によれば、Ca/Al 比は、1.12 と高い値を示している。黄砂を主に形成する鉱物・土壌粒子の主成分であるNa、K、Ca、Mg、Al、Ti などはすべて粒径約4μm に極大を示し、Ca 以外は水不溶性成分が大部分を占めた。各粒径の水不溶性成分ではAl と他の主成分との間に極めて良い直線性が認められた。これは、砂漠鉱物・土壌粒子が、粒径に関わらず同じ化学組成をもっていることを示している(金森他 1991)。それに対し、土壌起源ではないと考えられるアンモニウムイオン(NH4+)、硫酸イオン(SO42-)、硝酸イオン(NO3-)などは対Al 比のばらつきが大きく、黄砂粒子が人為起源の大気汚染物質を取り込んでいることが伺われる。

以上の事例は、地上におけるエアロゾル採集に基づくものであるが、航空機や気球を使って試料の採集を試みた例がいくつかある。航空機にアンダーセンサンプラーを搭載し、試料採集を試みた例では、日本上空においては粗大粒子にNO3-がしばしば認められ、黄砂粒子に窒素化合物が沈着(Deposit あるいはUptake)した可能性が示唆されている(Mori 他 1998b)。

電子顕微鏡観察あるいはエネルギー分散型X 線(EDX)分析を目的としたインパクターを航空機に搭載した試みはかなり以前から行われており、最近では黄砂の発生源地域で得られた試料との比較が行われており、SOx の黄砂表面への沈着が、黄砂が上空を輸送されている間に生じていることを示す事例が多く出されている(Iwasaka 他 1988、Trochkine 他 2002、2003a、2003b)。


重要な箇所は赤字にしてあります。ちょっと纏めて列記してみます。

1.黄砂は大気エアロゾルであり、それは雲生成に関わる凝結核として作用する。
2.黄砂粒子は鉱物由来や人為起源の物質によって構成されている。
3.人為起源物質には燃焼由来の硫酸イオンや硝酸イオン等(大気汚染物質)が含まれている。
4.SOx、NOxなどの大気汚染物質は沈着(沈澱または取り込み)と云う形態で含有される(多孔質粒子ではないようなので、細孔吸着ではなく、通常の物理吸着と化学吸着で付着するものと思われる)。
黄砂粒子の電顕写真
5.黄砂粒子の表面反応は極めて複雑なプロセスで進行し、未解明の問題が多い。5.その表面反応は、大気の水分量に大きく依存する。
6.中国の産業活動に伴う硫黄分を含んだ排気は、硫酸アンモニウムとして大気中に浮遊するが、これと土壌起源の炭酸カルシウム(CaCO3)が反応し、複分解により石膏(硫酸カルシウム)となる可能性がある(複分解とはAB+CD->CB+ADを意味する)。
7.黄砂は硫酸イオン等を含む雨、いわゆる酸性雨を、黄砂主要成分中のカルシウム塩(炭カル、アルカリ性)により中和する作用がある。
8.一方、黄砂に含まれる産業活動由来の硫酸イオンも同時に雨に溶け出す。つまり、酸性雨を中和すると同時に、その雨の酸性化にも寄与するという、結局、意味のない作用をもたらしている。


簡単に云えば、黄砂の構成成分は鉱物由来、人為活動由来(海塩由来もある)の物質が混在したもので、これと大気や降雨との相互作用により、様々な生成物質が生み出されている、と云ったところでしょうか。
そして、その相互作用を引き起こす主因が、やはり中国によって吐き出されるSOx、NOxであることです。こうした大気汚染物質が本来の黄砂粒子に吸着して、日本の地表近くの大気を汚してくれるわけですね。

一方、つい最近(H19年4月)の同中間報告(黄砂実態解明調査中間報告書)では、「人為発生源由来の汚染物質を吸着したと考えられる黄砂の飛来が確認されたものの、黄砂が飛来していないときと比較して、黄砂飛来時に汚染物質濃度が高くなったとは言えないことが示されています。」なんて、まるで大気汚染物質濃度の増加に黄砂が関与しないかの如く述べられてます。
本当でしょうか。

この調査は、調査結果を「黄砂」、「弱い黄砂」、「非黄砂」に分類して、各々の物質濃度を分析しているわけですけど、”黄砂の有無による比較をしたところ、鉱物粒子由来は黄砂時に濃度が高く、弱い黄砂時、非黄砂時になるに従って低くなった。一方、燃焼由来、海塩由来の濃度は、黄砂の有無による差異はあまりなかった”ことを根拠としてます。

しかし、調査時期を観ると”平成14年度から平成17年度までの黄砂飛来シーズン(3月から5月)の22回”と書いてあります。と云うことは、非黄砂時とは云っても黄砂期間内での測定ですから、それが黄砂時のインターバルであり、かつ風量の少ない時期ならば、直前の黄砂によって運ばれた残存物質の影響を排除したとは云えないことになります。
要するに、黄砂により運ばれた物質が未だ浮遊している可能性を排除してないと云うことです。これを排除するためには、全く黄砂の発生しない時期(例えば11月~1月とか)を”非黄砂時”として測定することだろうと思います。

次に興味を引くのが、黄砂が様々な化学物質を含む特徴的な大気エアロゾルであること事からくる気象への関わりです。
上記 1.で示したように、エアロゾルは雨を降らす雲を作る元になります。

さて、ちょっとカメなんですが、先月の16日に以下の記事(和文はキャッシュ)がありました。
China refuses to release data on yellow sand
黄砂予報精度かすむ、国家機密と中国がデータ提供拒否

また、北大の低温研(低温科学研究所)の報告。
有機エアロゾルの組成・分布・変質と地球環境への影響

そして、WIRED VISIONの記事。
黄砂の甚大な被害と、「国家機密」としてデータ共有を拒否する中国
「天候制御」で世界をリードする中国

中国が気象情報公開を国家機密として法律で規制していることは知ってましたが、最初、私は黄砂に吸着した物質により、自国の汚染状況の詳細を知られ、今以上に非難されることを嫌って禁止したものだと思ってました。

上記の低温研ニュースでも、幾つかの有機エアロゾルの特徴、とくに産業由来(都市型)の有機物が光化学反応により、ジカルボン酸(カルボキシル基(COOH)が二つある物質の総称)を生成し、それが気象、雲生成に大きく影響すること、そして、そのジカルボン酸濃度が中国の主要都市で非常に高かったことを考えると、中国の大気汚染がアジア地域の気象状況にとって深刻な問題であることが解り、機密化理由の信頼度が一層アップします。

とは云え、黄砂に含まれる有機エアロゾルの変性が誘起される気象と密接に関わるという部分で、一番下の記事の「天候制御」と云う新たな理由も無視できないのかな?と思うようになりました。

この記事によると、
中国は、クローン、建築、それに地質工学の分野で世界の先頭に立っているが、それだけでは満足せず、天候のコントロールについても世界の他の国々を大きく引き離しつつある。
だそうで、自国のためなら他への迷惑など一切考慮しない中国共産党の傲慢な性質が如実に表れているのだとしたら、何やら非常に不気味な様相を呈してきます。しかし、実際に北京オリンピックを前に記事にあるような気象制御をやってるのだろうか?
気象用ミサイルサイト

これはちょっとトンデモ系になりますが、こうした気象制御を上手く応用すれば、気象兵器なんてものも可能かもしれないし・・・斜め上国家北朝鮮の宗主国だけあって何をやらかすか分かったもんじゃない。

結局、結論は「アジアの邪悪な暴れん坊国家の不気味な一面を観た」ってことですね。
さすが、一党毒菜国家だこと。
いつも、芸のない〆ですいませんです。
備忘録的愚考でした。

附録:環境省にある黄砂情報までカバーする大気汚染物質広域監視システムを”そらまめ君”と呼ぶそうです。なんか、例の”何事にも前向きなソーリ”を想い出しちゃって、こりゃ駄目だわ~と思う今日この頃。



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「人権擁護法案」再提出に対する要請受付国民集会のお知らせとチャイナフリー・キャンペーン


題目はベタですけど、4日後に開催される「人権擁護法案」再提出に対する要請受付国民集会」に対するお知らせと「アジアの真実」様が呼びかけておられます「中国製品不買運動(チャイナフリー・キャンペーン)」に対する賛同エントリーです。

さて、いわゆる人権擁護法案については拙ブログでも少し調べてみて、その危険性について指摘させていただきました(悪用される可能性のあるものは、いずれ悪用される)。
しかしながら、現在、与党自民党にいる(巣くう?)発言権のある政治屋達は、その権限でもって大多数の議員を賛成側に囲ってしまっています。つまり、この法案が国会に上程されれば、今のままでは成立してしまう公算が非常に高いわけです。

そこで、南京(事件)問題でもご活躍の自民党・戸井田とおる衆院議員が音頭を取り、ジャーナリストの水間政憲氏等の協力により、3月10日(月) 17時~、東京・永田町にある「憲政記念会館講堂」で、「いわゆる「人権擁護法案」再提出に対する要請受付国民集会」を開き、多くの国民が文書により、事大的な国会議員に対して”NO!”を突き付けるアクションを起こします。

これはネットで行われている反対運動とは趣向が異なり、リアルな(反対)文書を国会議員達に見せつけることによって民意の圧力を肌で感じ取らせる意味合いがあります。
民意の後押しさえあれば、上の政治屋達による様々な圧力を跳ね返す力を得る効果が期待できます。

堆(うずたか)く積まれた反対署名文書を目の当たりにして、一人でも多くの議員諸氏が改心されることを切に望みます。

この集会の趣旨はあくまでリアルな反対文書を見せつけることですから、WEBでの賛同だけでなく、手紙を出すという実際行動が必要となります。
とは云え、そんな難しいことを書く必要はありません。最も単純には「人権擁護法案反対!」と大書して、あとは氏名と居住されている都道府県、市区町村名まで記しただけの手紙でも構いません。
手紙の内容については、以下のサイトが非常に参考になります。
手紙の送り先詳細や8種類の文例があります。
外国人参政権 @ wiki 人権擁護法案

勿論、集会詳細については戸井田議員のサイトもご参照下さい。
(Ⅳ)いわゆる「人権擁護法案」再提出に対する要請受付国民集会

参照動画:

いわゆる「人権擁護法案」の危険性 #1-3
いわゆる「人権擁護法案」の危険性 #2-3
いわゆる「人権擁護法案」の危険性 #3-3

要請受付国民集会の広報動画:

中国や北朝鮮の悪口を言うと処罰!氏名を公表!日記やパソコンも押収!拒否すれば罰金!人権擁護法案が提出されます(eggmoony氏作成の動画)


偽装人権擁護法案・撲滅キャンペーン!!-急げ!要請受付国民集会宛てに反対の手紙を出そう(拙動画)

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上記エントリーに関して追記です。
これから郵送で送るとなると、ひょっとして当日に間に合わない可能性があります。そんな方用に荒川区議会議員の小坂英二氏が以下のような提案をされてます。これなら、確実に届けていただけますので、郵便で送れない方は利用されると良いでしょう。
荒川区議会議員小坂英二の考察・雑感 => 3月10日は人権擁護法案反対集会へ!

必要部の抜粋:
当日、行けないけど要請文を渡したい、という方、上記の郵送でも結構ですし、メールの添付ファイルでワード文書などで作成したものをこちら((kosakaeiji@1995.jukuin.keio.ac.jp))小坂宛へ送っていただければ、当日届けますので、宜しければどうぞ。
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【偽装・人権擁護法案】3/10 要請書で日本を守ろう!【撲滅キャンペーン】

関連動画プレイリスト(上の動画が纏めてあります):

YouTube =>
http://jp.youtube.com/view_play_list?p=8F3A03EFDEA4FD4A
ニコニコ動画 => http://www.nicovideo.jp/mylist/5427736
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※FAXでも送れます!(戸井田議員ブログから引用)※ 3/8追記
で通常の業務に支障をきたす恐れがあったので、FAXでの要請書の受付をお断りしておりましたが、皆様の熱い思いを最優先する為に、ただいまより3月10日午前中までFAXでの要請書受付を開始いたしますので、よろしくお願いいたします!
なお、当日「ネットラジオでの配信」や「動画サイトへの投稿」をする為の撮影等も大丈夫ですので、撮影される方がおられましたら周りの方の迷惑にならない様にお願いいたします。たくさんの送信をお待ちしております。

FAX番号:03-3508-3325
戸井田とおる
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直前エントリーで、メタミドホスが包装材を浸透・透過したとする中国の主張に対する疑義について書きましたが、ちょっと専門的過ぎましたので、もっとシンプルに言いましょう。

現在、普通に流通している冷凍食品包装材を、メタミドホスが提示された実験条件で浸透・透過することは、科学的に観て極めて低い、すなわち、(まず)有り得ないと云って良い。

それでも、浸透したと言い張るなら、まさしく通常では有り得ない条件で無理矢理結果を得たか、全くの虚偽だと言って良いと思います。

独裁国家は、その下に統制された組織や人間を如何様にも都合良く従わせることが可能です。そんな中国の根源的欺瞞が今回、一連の食品事件によって日本国民の前に曝け出されたことは、わが国にとって不幸中の幸いだったと言えます。

3/5の日経・中国ビジネス特集WEBに以下のニュースがありました。

中国製品「懸念」8割、民間企業が回答・帝国データ調べ

信用調査会社の帝国データバンクが5日に発表した民間企業対象のアンケート調査によると、中国と取引している企業の80%が中国の製品やサービスの品質に「懸念がある」と回答した。こうした懸念への対応策としては「チェック体制の強化」が55%で最も多く、日本企業が中国からの製品調達に慎重になっていることが分かった。

中国製品への懸念としては「実際にはサンプルとは異なる商品が届いた」など、品質に加えて安全性を疑問視する声が多かった。将来、取引先を中国以外の新興国に切り替えることを検討すると回答した企業も24%あった。「中国製食品の安全性をめぐる報道を受けて、食品以外の企業でも中国製品への関心が高まっている」(帝国データバンクの小松崎五郎産業調査部部長)

調査は2月20日から3月2日までインターネットを通じて実施し、1万66社から回答を得た。このうち4080社が中国と取引があると回答した。


記事では8割と書いてありますけど、実際、中国に進出している日本企業で、安い労働単価と原料価格以上のプライオリティを見出しているところは殆ど無いと言って良いんじゃないでしょうか?

中国への依存度がこれらの事件によりどれだけ下がっていくのか、興味あるところではありますが、他のことは兎も角としても、こと食べ物に関しては日本人は非常に神経質ですから、ここからは暫く、庶民レベルにまでそれこそ”浸透”した対中忌避感情と媚中ばかりの為政者による引き戻しの鬩(せめ)ぎ合いが続くものと思います。
媚中政治家の考え方を変えさせられるような強い効果が出て欲しいと思ってます。

そんな中で、「アジアの真実」様が中国製品不買運動(チャイナフリー・キャンペーン)を呼びかけておられましたので、既に以前から個人的にはやっていることとは云え、敢えて賛同させていただき、かつ更にそれを啓蒙する運動に加わることとします。

出来ることから始めよう、の精神です(これより、ブログ左カラムに以下を画像を貼ります)。
10051140761.gif
当該ブログのコメント欄を観ていますと、相変わらずのネガ意見や揚げ足取りをしている輩が目に付きますね。
誰だって、ここまで浸かりきってしまった対中依存度がすぐに解消されるなんて思わないのにも拘わらず、何か一言でも屁理屈かましたい捻くれ者が多いんでしょうね、こと中国になると特にですが・・・。

中国製品の忌避が発展して、嫌中感情そのものに変質していくことは否定しません。
しかし、これとて根拠のない感情ではない以上、感情改善にはその元となる中国側の反省が不可欠です。それが出来ない国だから嫌われるのです。
これからの日本人は、寝惚けたお人好しであってはならないと思ってます。
善人ぶった言説では、早晩、それを利用する強かな隣人達(含アメリカ)に物理的のみならず、精神的にも完全に侵食されます。

これが日本人の日本人のための”人権そのもの”なんです。



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中国・包装材浸透(透過性)実験への疑義


まぁ例のメタミドホスなんですけど、今回の中国政府の発表はイヤになるくらい予想通りでした。そもそも日本の化学分析技術(科警研発表)を舐めてますよね。

確か、この国の右隣の北朝鮮とか云う山賊集団でも同様のことがありました。
Nature誌に載った日本の分析結果(めぐみさんの遺骨判定)に対する反証論文を、鬼の首を取ったように日本の捏造にすり替えてました。あれは誰かさんがわざわざ有り得ないような温度で焼いたりするから、そうした前処理をしたものの分析には断定するほどの信頼性があるのか?って言っただけの報告でした。寧ろ、あの論文は高温焼きの効用?にある意味お墨付きを与えただけで、北にとっての工作が逆説的に証明された一件でした。

それはさておき、今回の中国側の検証実験では、包装材(フィルム)への薬剤浸透性に関して、ご存じのように日本の分析結果と対立した判定が出たと・・・。
う~ん、どうなんでしょうね。
実験プロセスの詳細は「【記者ブログ】食の安全学再び:中国公安のいいぶん聞いてみる? 福島香織 (1/5ページ)」に書いてありますけど、私は、この実験スキームでフィルム浸透性が発現したとはとても思えませんでした。

ちょっと長くなりますけど、化学的に考えてみましょうか。
純メタミドホスの簡単な物性は以下の通りです。

------
METHAMIDOPHOS
O,S-Dimethyl phosphoramidothioate
Phosphoramidothioic acid, O,S-dimethyl ester
C2H8NO2PS

・分子量:141.1
・融点:44℃
・比重(水=1):1.3
・水への溶解性:よく溶ける
・蒸気圧:0.002 Pa(20℃)
国際化学物質安全性カードより)
------

融点から、常温では固体であるが、水に易溶なので簡単に液体化できる。
20℃における蒸気圧を観ても、極めて気化しにくい物質である(0.002Paは水銀柱に直すと約1.5×10のマイナス5乗 mmHg)。因みに水の同温における蒸気圧は約17.3 mmHgですので、この物質が如何に蒸散しにくい物質か分かります。

今度は包装材です。
一般に、冷凍食材用フィルムは単層フィルムではなくて、金属層を入れたラミネート(多層)構造の高分子(ポリマー)材料が使われます。大抵は内側をアルミ蒸着したポリプロピレン(PP)かポリエステル(PET)です。ただ調べてみると、JTの包装材はアルミ蒸着系ポリマーフィルムらしいのですが、生協のものは非蒸着系だったとかでよく分かりませんでした。ですから、両方について考えてみる必要があります。

さて、物質がフィルムを浸透・透過する場合の形態は大別して液体、気体の二つです。

ここでは、薬剤による腐食作用は除外して考えます。こういった相互作用が激しい場合は、大体は肉眼レベルで表面状態が変質しますので必ず所見中で述べられるはずですからね。

まず、液体であったのなら、浸透するためには、始めに包装材表側のポリマー表面にこの液体が”濡れる”必要があります。”濡れる”というのは、表面に馴染んで濡れ拡がることを意味します。この対極が”撥(はじ)く”と云えば分かりやすいと思います。もし、”撥いた”場合には、浸透現象が液体状態で生ずることはありません。

それで、この”濡れ”が起こるためには、液体の表面張力がフィルムのそれより小さくなる必要があります。有名なテフロンと云う商品名の物質がありますけど、あれは水を思いっきり撥きますよね。水の表面張力がテフロンのそれよりすごく大きいからです。テフロンの表面張力は非常に低く、油でさえ撥き、これを濡らす液体は通常ではほぼ有りません。

話しを戻しますと、メタミドホス水溶液はその易溶性や構造を考えれば、確実に高い表面張力をもっています(極性液体)。一方、相手の包装材の表層は上記のようにPPかPETです。純PPは低い表面張力をもっています。純PPの場合、メタミドホス水溶液をまず完全に撥くはずですから浸透することはないと観て良いでしょう。浸透の初期段階でブロックされます。

しかしながら、包装材の真の表面層は印刷層です。単に印刷してあるだけならば、その層材はインクになりますが、最近では先に印刷済のフィルムを貼り付ける(接着する)形式のようですから、そのフイルムの表面張力が問題となりますし、またPPに接着しやすくするためにPP表面をコロナ放電処理等で改質してある可能性(高表面張力化)も考えなくてはなりません。従って、包装材表層の表面張力がメタミドホス水溶液のそれを上回るケースならば、濡れてしまう、つまり浸透の初期段階が完了してしまう可能性があります。

ちょっと複雑になってしまいましたね。もっと単純に考えましょう。
例え、界面化学的な浸透の初期段階が完了し得たとしても、以下の理由で液体状態での浸透の可能性はほぼ無いと考えられます。

1.濡れがもし起こっても、それは最表面層だけの現象であり、更に内部(バルクと云います)にまで浸透することは、高分子フィルムのバルクにおける分子配列や表面張力値を考えると、先に述べた腐食でも生じない限り非常に考えにくい。

高分子には、その分子の動き(セグメント運動性)に凍結、非凍結の境目となる温度が存在します。それをガラス転移温度(Tg)と云いますが、周囲温度がTg以下になると、当該高分子を構成する分子や分子集団は凍結されて動けなくなります。ゴムや粘着剤が室温で柔らかいのは、それらを構成する高分子のTgが室温よりずっと低いところにあるからです。
ここで扱っているPPやPETのTgは、それぞれ約-10℃、約70℃にありますから、実験温度の-18℃ではどちらも分子鎖の運動は凍結されていると観て良いでしょう。従って、早い話がフィルム分子が動かないと云うことは周囲、すなわち薬剤との相互作用が非常に小さい、不活性な状態にあると云うことです。この場合には、液相薬剤分子(大きい)が凍結された分子鎖をすり抜けて(隙間が小さく、動かない)内部に到達する可能性はほぼありません。
ただし、正確に云いますと、高分子最表面のTgは通常のそれ(バルクTg)よりかなり低くなっていますので、-18℃でも最表面には薬剤が浸透する可能性はあります。しかし、この挙動によって浸透がバルクにまで到達することがないことは1.の通りです;3/3 補則

2.ラミネート内側(つまり食品側)にアルミ蒸着層があれば、そこでまた再濡れが起こっても、金属構造による非常に密な分子充填状態をもち、水蒸気でさえ透過しない層内を通って内側まで浸透することは、これまた非常に考えにくい。

3.そもそも、実験条件である-18℃と云う温度で、メタミドホス水溶液は当該溶質濃度が低いうちでは液体状態を保てず、固体となっている。固体であれば、浸透しない。

中国の実験では最高60%水溶液(質量モル濃度換算で約4.25 mol/l)までフォローしてますけど、水のモル凝固点降下が1.85℃(1モルの溶質が溶けているときの凝固点降下、単位;K・kg/mol)であることを考慮すると、最高濃度でも-18度まで凝固点が降下することはない。つまり、最高濃度でも固体である。
ただし、メタミドホスが水中でn分子解離していると、上の最高モル濃度は4.25xn mol/lとなり凝固点が-18℃以下に下がって、-18℃でも液体状態を保つ可能性があります。

それから他の材質条件ですけど、まずPETの場合、PPよりも高表面張力材料ですが、メタミドホス水溶液のそれより低い可能性は小さいこと(を上回る可能性は非常に小さいこと;3/3 修正)と、低温で脆性(脆い性質)が出るため、低温包装用途にはあまり使われないことを併せれば、これを使って浸透性が発現した可能性はほぼ除外しても良いでしょう。勿論、上のによっても否定できます。

そして、非蒸着系材料の場合もPPならば、上記、によって否定できますし、上記後者の理由で単独でPETを使うことはまず考えられないため、これも否定できます。

次に、気体状態での浸透(透過)ですが、上の20℃においてさえ極めて低い蒸気圧、さらに実験温度が-18℃であることを加味すれば、これはもう確実に透過して食品に付着することはないでしょうね。

と云うことで、考えられるほぼ全てのケースでメタミドホス水溶液が包装材を浸透・透過して食品にまで達することは無いと言えます。

一応、フォローのため、中国での実験で浸透があったケースを、意図的かどうかを予想して以下に書いておきます。

A.純品のメタミドホス以外、例えば、アセフェート(水に溶かすとメタミドホスを生成する)を実験に使った場合、不純物及び未反応物の内容や量によって腐食性や通常条件では発生しない特異的な触媒作用により浸透性が発現した。そして、腐食性による材料の変質や特殊な不純物の組成を隠しているケース(メタミドホスが軟鋼や銅を侵すという報告もあるようです)。

B.メタミドホスを浸透させるためだけに、包装材料に対して非常に強い相互作用をもつ溶媒(トリフルオロ酢酸のような強烈なポリマー溶解作用をもつもの)を使い、それを隠しているケース。

C.実験後、包装材内側から成分を拭き取る際に、ただの操作ミス或いは清浄管理不十分で材料表面のメタミドホスが混入したケース。

D.あとは上の方でも述べましたように、メタミドホス水溶液に対して、より親和性のある包装材を使って無理矢理浸透性を発現させた(例えばPETより”濡れ”の良いものとか)。

まぁこれくらいでしょうか。
どのみち、上記ならば、日本にバレた時点で終了です。
それ故、実験資料の詳細を出し渋るでしょうね。
現時点で、メタミドホスが中国国内で混入した可能性を相当な蓋然性をもって疑うのは、以下を見ても明らかです。

残留農薬違反事例検索結果(メタミドホス)・・・ブラジル、フィリピンを除いて、残りは全部中国です違反した国はもうひとつ、台湾もありました。それに上をクリックすると、不正アクセスとか何とか・・・ここから農薬”メタミドホス”で検索して右上の”違反事例”をご覧ください;3/2追記


それでもう一つ忘れてました。中国を擁護するわけではありませんけど、不純物成分が純品以外のメタミドホスで世界共通だろう、ってのには同意します。製法が同じなら、大抵は不純物や未反応物は似たようなものになるはずで、純品以外の当該商品を見分けるのは相当に困難であることは確かだと思います。
ただ、これが中国以外の第三国を犯人に仕立てるためのイヤらしい誘導であると観た福島香織記者の読みにも同意しますが・・・。

最後に、今回の中国側が行った発表の意図と云うか動機の裏に、切迫した経済的事情があることはこのエントリーの中でも最も確定的な要素でしょうね。
これについては、青木直人氏の最新エントリーをお読み下さい(毒入り餃子の経済学)。

更に最後に、「(中国側は)これからも日本と共同して、しっかり調査したいということを言っていたのではないか。非 常 に 前 向 き だ」とな・・・前向き・・・福田さん、冷静と云うよりも現実逃避でしょうね。

以上です。


附録:Supplement

毎日元気!」と云うブログのエントリー”包装材に対する不安 ”に、以下のことが述べられていました。

「今回問題のメタミドホス系のものは浸透力が強く、
包装材の外側に付着していても、内部まで浸透し
毒性が移ることがある。
過去にドイツ(だったはず)でパンを食べて、同様に
中毒症状が出て、原因を調べてみた。
ある運搬用トラックが農薬を運んだことがあり
そのトラックで運ばれた小麦粉を使ったパンがその時の中毒の元となる
パンであった。という症例もある。」

という内容・・・。

その話から、次は、ある機関が包装材の浸透性について実験を行ったという。
通常、問題になった中国製餃子の包装に使われているようなものは
水の浸透はしないが、メタミドホスのようなタイプのものは実際に
多くはないが浸透したことは事実。  だとか・・・


どこのワイドショーだったのかはちょっと分かりませんね。その専門家の言う前半のパン小麦の話しですけど、これと今回のケースを同列に見るべきでは無いと思います。
何故かと申しますと、メタミドホスは極性の強い物質ですから、浸透性も強いのはその通りですが、これは主に人間の皮膚のような親水性の多孔性表面に対する言葉です。一般に冷凍食品包装材のような疎水性表面には通常適用できません。
例にあるように、トラックで農薬と小麦が同居することで農薬成分が小麦に移ったのだとしたら、小麦の包装材が例えば紙のような高い吸水性の多孔性材料だった可能性が大です。尤も、その包装材の材質が書いてありませんので、何とも言えませんが・・・。
それと、後半の”ある機関”とはどこのことでしょうかね。この機関が行った検証実験の詳細を聞いてみたいです。
あっ、別にこのブログ主が怪しいと言っているわけではありませんので、誤解無きようお願いします。



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