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黄砂関連備忘録


今年もあの鬱陶しい黄砂の季節になってまいりました。
この3日には日本列島にも広範囲に飛来して日本の大気を汚してくれたわけです。とても春霞だなんて悠長なことは言ってられませんね。
黄砂は、英語で”Asian Dust”だの”Yellow Dust”だのと呼ばれるそうですけど、個人的にはChinese Poisonous Dust中国毒塵はたまた迷惑砂メイワクサと呼んでやります。

冗談はさておき、この黄砂の化学特性が年々凶悪になってきていることは皆さんもご承知のことだろうし、それが中国による人為汚染によるものであることも、これまたウェルノーンなこと。
以下、備忘録的に愚考を述べてみます。ですから、あまり面白くないと思います。

まず、環境省の黄砂問題検討会報告書(H17年)から、黄砂の物理・化学的性質について述べられた箇所を、長文ですけど、一応備忘録ですので引用しておきます(第2章、2.3. 物理・化学的性状)。

2.3. 物理・化学的性状
2.3.1. 物理性状
黄砂粒子の粒径についての最も古い測定としては、1920 年に中国で降塵を顕微鏡観察した結果が残されている。また、1934 年には、中国から日本にかけての詳細な調査が行われており、これによれば、黄砂粒子の粒径は全体として0.5~0.001mm の範囲であるが、中国、韓国、日本の順に小さくなり、八重山諸島では、0.05mm 以下となったことが報告されている。この種の観測は、光学顕微鏡を使ったものであり、検出限界以下の小さい粒径のものは観測できないので、それらについて議論はできない。

浮遊している大気エアロゾルへの関心は、1970 年代から急速に高まり、様々な条件下でエアロゾルの採集が行われた。一方で、黄砂への関心もそれにつれて高まり、氷晶核あるいは凝結核としての機能を知るために、鉱物学的研究が行われるようになった。1979 年に名古屋でアンダーセンサンプラーを用いて行われた結果は、1μm 以上の大きな粒子濃度が高く、ピーク粒径は4μm であった。通常見られないこの粒径の粒子は黄砂と考えられた。この試料を、X 線回折装置により鉱物組成を調べた結果、砂塵中の石英や長石の造岩鉱物、更に雲母(イライト)、カオリナイト、緑泥石などの粘土鉱物が多く、いずれも直径1.0μm~30μm の粒径範囲に分布し、4μm 付近に最多直径を示す一山の粒度分布をもつということが判った。粘土鉱物が2μm 以下の土壌構成粒子中に含まれる特性をもつことを考えると、大気中の黄砂粒子は、その多くが純粋な鉱物粒子から成るのではなく、粘土鉱物の構成粒子が相互に凝集したものか、あるいは石英や長石などの粒度の粗い粒子の表面に粘土鉱物が付着した粒子から成るであろうと推定される(石坂 1991)。

中国の黄砂発生源地域であるタクラマカン砂漠でいわゆるダストフロントのダストを40μm から600μm の32 粒径クラスに分級して計測した場合、地表面で球と仮定した場合の相当粒径の平均は103μm で最頻値が70~80μm と報告されている(Yamada 他 2002)。このように、黄砂粒子あるいは鉱物・土壌粒子のサイズ分布に関する知見は極めて限られていたが、最近の活発な研究を通して、中国東部沿岸地域、韓国、日本等で多くの知見が得られている。また、静穏時ではあるが、タクラマカン砂漠上空での観測が行われ、結果が公表されている。

2.3.2. 化学性状
日本上空に飛来する黄砂粒子の鉱物組成には、主要鉱物として、石英、長石、雲母(イライト)、緑泥石、カオリナイト、方解石、石膏、カルサイト、硫酸アンモニウムなどを含んでいる。これを中国の土壌の性質と比較すると、砂漠土壌には石膏を含むものがしばしば見られることから、黄砂が砂漠土壌に由来していると考えられていた(石坂 1991)。

黄砂粒子が大気中を浮遊する間に周辺の大気中のガスと様々な反応をする可能性が、飛行機観測によって指摘されて以来(Iwasaka 他 1988)、多くの関心を集めるようになっている。表面反応は極めて複雑なプロセスであり、未解決の問題が多い。東アジアの環境に関わる物質循環に影響する可能性が指摘され、非常に初歩的な形ではあるが、このプロセスを数値モデルに取り込みシミュレーションが試みられている(Denterner 他 1996)。

また、室内実験では、湿度が大きな役割を果たしていると推察される結果が多く出されている(Mori 他 1998a)。この例として、黄砂粒子と硫酸アンモニウム粒子が湿った大気中で凝集し反応する機構が挙げられている。中国の産業活動に伴う硫黄分を含んだ排気は、硫酸アンモニウムとして大気中に浮遊する。これと、土壌起源の炭酸カルシウム(CaCO3)が反応し、石膏となる可能性が示唆されている。実験では、数日で中間生成物のコクタイトを生成し、最終的には石膏が生成された。

また、黄砂粒子表面でのSO2 ガスの直接酸化捕捉機構を調べた室内実験(Sakamoto 他 2004)では、硫酸塩生成までの過程は乾燥状態ではオゾンの関与が大きく、高湿度条件下では粒子表面の水分含量に左右されることが明らかになっている。

黄砂の飛来中に降水があると、降水のpH は7前後と高くなりアルカリ性を示す場合が多いが、これはカルシウムイオン(Ca2+)濃度の増加に因る。黄砂中の主要鉱物であるカルサイト(炭酸カルシウム)が雨水中の過剰な酸性イオン種(硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン)濃度に対応して中和反応的に溶け出したためである(鶴田 1991、Nishikawa 他 2000)。また、前述のように日本に飛来した黄砂は硫酸イオンを粒子表面に集積している。その硫酸イオンも降水に溶け出しやすく、降水中の硫酸イオン量の増加に寄与しているものと考えられている。

中国北部の表層土の土壌の化学分析を行った結果、ケイ素(Si)の他、長石や粘土鉱物に由来するアルミニウム(Al)、方解石などに由来するカルシウム(Ca)、イライトなどに由来するカリウム(K)が多く含まれるなどの特徴があった。日本各地の表層土の化学組成と比較すると、日本の表層土では、Ca 含有量が低く、特にCa/Al 比では、中国の0.6~1.3 に比較して日本では0.2 以下と低く、一般的にはCa 含有量の高いことが黄砂粒子の特徴であることを示している。

黄砂時にアンダーセンサンプラーによって粒径0.045~30.5μmの粒子状物質を採取した試料の化学成分分析の結果によれば、Ca/Al 比は、1.12 と高い値を示している。黄砂を主に形成する鉱物・土壌粒子の主成分であるNa、K、Ca、Mg、Al、Ti などはすべて粒径約4μm に極大を示し、Ca 以外は水不溶性成分が大部分を占めた。各粒径の水不溶性成分ではAl と他の主成分との間に極めて良い直線性が認められた。これは、砂漠鉱物・土壌粒子が、粒径に関わらず同じ化学組成をもっていることを示している(金森他 1991)。それに対し、土壌起源ではないと考えられるアンモニウムイオン(NH4+)、硫酸イオン(SO42-)、硝酸イオン(NO3-)などは対Al 比のばらつきが大きく、黄砂粒子が人為起源の大気汚染物質を取り込んでいることが伺われる。

以上の事例は、地上におけるエアロゾル採集に基づくものであるが、航空機や気球を使って試料の採集を試みた例がいくつかある。航空機にアンダーセンサンプラーを搭載し、試料採集を試みた例では、日本上空においては粗大粒子にNO3-がしばしば認められ、黄砂粒子に窒素化合物が沈着(Deposit あるいはUptake)した可能性が示唆されている(Mori 他 1998b)。

電子顕微鏡観察あるいはエネルギー分散型X 線(EDX)分析を目的としたインパクターを航空機に搭載した試みはかなり以前から行われており、最近では黄砂の発生源地域で得られた試料との比較が行われており、SOx の黄砂表面への沈着が、黄砂が上空を輸送されている間に生じていることを示す事例が多く出されている(Iwasaka 他 1988、Trochkine 他 2002、2003a、2003b)。


重要な箇所は赤字にしてあります。ちょっと纏めて列記してみます。

1.黄砂は大気エアロゾルであり、それは雲生成に関わる凝結核として作用する。
2.黄砂粒子は鉱物由来や人為起源の物質によって構成されている。
3.人為起源物質には燃焼由来の硫酸イオンや硝酸イオン等(大気汚染物質)が含まれている。
4.SOx、NOxなどの大気汚染物質は沈着(沈澱または取り込み)と云う形態で含有される(多孔質粒子ではないようなので、細孔吸着ではなく、通常の物理吸着と化学吸着で付着するものと思われる)。
黄砂粒子の電顕写真
5.黄砂粒子の表面反応は極めて複雑なプロセスで進行し、未解明の問題が多い。5.その表面反応は、大気の水分量に大きく依存する。
6.中国の産業活動に伴う硫黄分を含んだ排気は、硫酸アンモニウムとして大気中に浮遊するが、これと土壌起源の炭酸カルシウム(CaCO3)が反応し、複分解により石膏(硫酸カルシウム)となる可能性がある(複分解とはAB+CD->CB+ADを意味する)。
7.黄砂は硫酸イオン等を含む雨、いわゆる酸性雨を、黄砂主要成分中のカルシウム塩(炭カル、アルカリ性)により中和する作用がある。
8.一方、黄砂に含まれる産業活動由来の硫酸イオンも同時に雨に溶け出す。つまり、酸性雨を中和すると同時に、その雨の酸性化にも寄与するという、結局、意味のない作用をもたらしている。


簡単に云えば、黄砂の構成成分は鉱物由来、人為活動由来(海塩由来もある)の物質が混在したもので、これと大気や降雨との相互作用により、様々な生成物質が生み出されている、と云ったところでしょうか。
そして、その相互作用を引き起こす主因が、やはり中国によって吐き出されるSOx、NOxであることです。こうした大気汚染物質が本来の黄砂粒子に吸着して、日本の地表近くの大気を汚してくれるわけですね。

一方、つい最近(H19年4月)の同中間報告(黄砂実態解明調査中間報告書)では、「人為発生源由来の汚染物質を吸着したと考えられる黄砂の飛来が確認されたものの、黄砂が飛来していないときと比較して、黄砂飛来時に汚染物質濃度が高くなったとは言えないことが示されています。」なんて、まるで大気汚染物質濃度の増加に黄砂が関与しないかの如く述べられてます。
本当でしょうか。

この調査は、調査結果を「黄砂」、「弱い黄砂」、「非黄砂」に分類して、各々の物質濃度を分析しているわけですけど、”黄砂の有無による比較をしたところ、鉱物粒子由来は黄砂時に濃度が高く、弱い黄砂時、非黄砂時になるに従って低くなった。一方、燃焼由来、海塩由来の濃度は、黄砂の有無による差異はあまりなかった”ことを根拠としてます。

しかし、調査時期を観ると”平成14年度から平成17年度までの黄砂飛来シーズン(3月から5月)の22回”と書いてあります。と云うことは、非黄砂時とは云っても黄砂期間内での測定ですから、それが黄砂時のインターバルであり、かつ風量の少ない時期ならば、直前の黄砂によって運ばれた残存物質の影響を排除したとは云えないことになります。
要するに、黄砂により運ばれた物質が未だ浮遊している可能性を排除してないと云うことです。これを排除するためには、全く黄砂の発生しない時期(例えば11月~1月とか)を”非黄砂時”として測定することだろうと思います。

次に興味を引くのが、黄砂が様々な化学物質を含む特徴的な大気エアロゾルであること事からくる気象への関わりです。
上記 1.で示したように、エアロゾルは雨を降らす雲を作る元になります。

さて、ちょっとカメなんですが、先月の16日に以下の記事(和文はキャッシュ)がありました。
China refuses to release data on yellow sand
黄砂予報精度かすむ、国家機密と中国がデータ提供拒否

また、北大の低温研(低温科学研究所)の報告。
有機エアロゾルの組成・分布・変質と地球環境への影響

そして、WIRED VISIONの記事。
黄砂の甚大な被害と、「国家機密」としてデータ共有を拒否する中国
「天候制御」で世界をリードする中国

中国が気象情報公開を国家機密として法律で規制していることは知ってましたが、最初、私は黄砂に吸着した物質により、自国の汚染状況の詳細を知られ、今以上に非難されることを嫌って禁止したものだと思ってました。

上記の低温研ニュースでも、幾つかの有機エアロゾルの特徴、とくに産業由来(都市型)の有機物が光化学反応により、ジカルボン酸(カルボキシル基(COOH)が二つある物質の総称)を生成し、それが気象、雲生成に大きく影響すること、そして、そのジカルボン酸濃度が中国の主要都市で非常に高かったことを考えると、中国の大気汚染がアジア地域の気象状況にとって深刻な問題であることが解り、機密化理由の信頼度が一層アップします。

とは云え、黄砂に含まれる有機エアロゾルの変性が誘起される気象と密接に関わるという部分で、一番下の記事の「天候制御」と云う新たな理由も無視できないのかな?と思うようになりました。

この記事によると、
中国は、クローン、建築、それに地質工学の分野で世界の先頭に立っているが、それだけでは満足せず、天候のコントロールについても世界の他の国々を大きく引き離しつつある。
だそうで、自国のためなら他への迷惑など一切考慮しない中国共産党の傲慢な性質が如実に表れているのだとしたら、何やら非常に不気味な様相を呈してきます。しかし、実際に北京オリンピックを前に記事にあるような気象制御をやってるのだろうか?
気象用ミサイルサイト

これはちょっとトンデモ系になりますが、こうした気象制御を上手く応用すれば、気象兵器なんてものも可能かもしれないし・・・斜め上国家北朝鮮の宗主国だけあって何をやらかすか分かったもんじゃない。

結局、結論は「アジアの邪悪な暴れん坊国家の不気味な一面を観た」ってことですね。
さすが、一党毒菜国家だこと。
いつも、芸のない〆ですいませんです。
備忘録的愚考でした。

附録:環境省にある黄砂情報までカバーする大気汚染物質広域監視システムを”そらまめ君”と呼ぶそうです。なんか、例の”何事にも前向きなソーリ”を想い出しちゃって、こりゃ駄目だわ~と思う今日この頃。



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中国・包装材浸透(透過性)実験への疑義


まぁ例のメタミドホスなんですけど、今回の中国政府の発表はイヤになるくらい予想通りでした。そもそも日本の化学分析技術(科警研発表)を舐めてますよね。

確か、この国の右隣の北朝鮮とか云う山賊集団でも同様のことがありました。
Nature誌に載った日本の分析結果(めぐみさんの遺骨判定)に対する反証論文を、鬼の首を取ったように日本の捏造にすり替えてました。あれは誰かさんがわざわざ有り得ないような温度で焼いたりするから、そうした前処理をしたものの分析には断定するほどの信頼性があるのか?って言っただけの報告でした。寧ろ、あの論文は高温焼きの効用?にある意味お墨付きを与えただけで、北にとっての工作が逆説的に証明された一件でした。

それはさておき、今回の中国側の検証実験では、包装材(フィルム)への薬剤浸透性に関して、ご存じのように日本の分析結果と対立した判定が出たと・・・。
う~ん、どうなんでしょうね。
実験プロセスの詳細は「【記者ブログ】食の安全学再び:中国公安のいいぶん聞いてみる? 福島香織 (1/5ページ)」に書いてありますけど、私は、この実験スキームでフィルム浸透性が発現したとはとても思えませんでした。

ちょっと長くなりますけど、化学的に考えてみましょうか。
純メタミドホスの簡単な物性は以下の通りです。

------
METHAMIDOPHOS
O,S-Dimethyl phosphoramidothioate
Phosphoramidothioic acid, O,S-dimethyl ester
C2H8NO2PS

・分子量:141.1
・融点:44℃
・比重(水=1):1.3
・水への溶解性:よく溶ける
・蒸気圧:0.002 Pa(20℃)
国際化学物質安全性カードより)
------

融点から、常温では固体であるが、水に易溶なので簡単に液体化できる。
20℃における蒸気圧を観ても、極めて気化しにくい物質である(0.002Paは水銀柱に直すと約1.5×10のマイナス5乗 mmHg)。因みに水の同温における蒸気圧は約17.3 mmHgですので、この物質が如何に蒸散しにくい物質か分かります。

今度は包装材です。
一般に、冷凍食材用フィルムは単層フィルムではなくて、金属層を入れたラミネート(多層)構造の高分子(ポリマー)材料が使われます。大抵は内側をアルミ蒸着したポリプロピレン(PP)かポリエステル(PET)です。ただ調べてみると、JTの包装材はアルミ蒸着系ポリマーフィルムらしいのですが、生協のものは非蒸着系だったとかでよく分かりませんでした。ですから、両方について考えてみる必要があります。

さて、物質がフィルムを浸透・透過する場合の形態は大別して液体、気体の二つです。

ここでは、薬剤による腐食作用は除外して考えます。こういった相互作用が激しい場合は、大体は肉眼レベルで表面状態が変質しますので必ず所見中で述べられるはずですからね。

まず、液体であったのなら、浸透するためには、始めに包装材表側のポリマー表面にこの液体が”濡れる”必要があります。”濡れる”というのは、表面に馴染んで濡れ拡がることを意味します。この対極が”撥(はじ)く”と云えば分かりやすいと思います。もし、”撥いた”場合には、浸透現象が液体状態で生ずることはありません。

それで、この”濡れ”が起こるためには、液体の表面張力がフィルムのそれより小さくなる必要があります。有名なテフロンと云う商品名の物質がありますけど、あれは水を思いっきり撥きますよね。水の表面張力がテフロンのそれよりすごく大きいからです。テフロンの表面張力は非常に低く、油でさえ撥き、これを濡らす液体は通常ではほぼ有りません。

話しを戻しますと、メタミドホス水溶液はその易溶性や構造を考えれば、確実に高い表面張力をもっています(極性液体)。一方、相手の包装材の表層は上記のようにPPかPETです。純PPは低い表面張力をもっています。純PPの場合、メタミドホス水溶液をまず完全に撥くはずですから浸透することはないと観て良いでしょう。浸透の初期段階でブロックされます。

しかしながら、包装材の真の表面層は印刷層です。単に印刷してあるだけならば、その層材はインクになりますが、最近では先に印刷済のフィルムを貼り付ける(接着する)形式のようですから、そのフイルムの表面張力が問題となりますし、またPPに接着しやすくするためにPP表面をコロナ放電処理等で改質してある可能性(高表面張力化)も考えなくてはなりません。従って、包装材表層の表面張力がメタミドホス水溶液のそれを上回るケースならば、濡れてしまう、つまり浸透の初期段階が完了してしまう可能性があります。

ちょっと複雑になってしまいましたね。もっと単純に考えましょう。
例え、界面化学的な浸透の初期段階が完了し得たとしても、以下の理由で液体状態での浸透の可能性はほぼ無いと考えられます。

1.濡れがもし起こっても、それは最表面層だけの現象であり、更に内部(バルクと云います)にまで浸透することは、高分子フィルムのバルクにおける分子配列や表面張力値を考えると、先に述べた腐食でも生じない限り非常に考えにくい。

高分子には、その分子の動き(セグメント運動性)に凍結、非凍結の境目となる温度が存在します。それをガラス転移温度(Tg)と云いますが、周囲温度がTg以下になると、当該高分子を構成する分子や分子集団は凍結されて動けなくなります。ゴムや粘着剤が室温で柔らかいのは、それらを構成する高分子のTgが室温よりずっと低いところにあるからです。
ここで扱っているPPやPETのTgは、それぞれ約-10℃、約70℃にありますから、実験温度の-18℃ではどちらも分子鎖の運動は凍結されていると観て良いでしょう。従って、早い話がフィルム分子が動かないと云うことは周囲、すなわち薬剤との相互作用が非常に小さい、不活性な状態にあると云うことです。この場合には、液相薬剤分子(大きい)が凍結された分子鎖をすり抜けて(隙間が小さく、動かない)内部に到達する可能性はほぼありません。
ただし、正確に云いますと、高分子最表面のTgは通常のそれ(バルクTg)よりかなり低くなっていますので、-18℃でも最表面には薬剤が浸透する可能性はあります。しかし、この挙動によって浸透がバルクにまで到達することがないことは1.の通りです;3/3 補則

2.ラミネート内側(つまり食品側)にアルミ蒸着層があれば、そこでまた再濡れが起こっても、金属構造による非常に密な分子充填状態をもち、水蒸気でさえ透過しない層内を通って内側まで浸透することは、これまた非常に考えにくい。

3.そもそも、実験条件である-18℃と云う温度で、メタミドホス水溶液は当該溶質濃度が低いうちでは液体状態を保てず、固体となっている。固体であれば、浸透しない。

中国の実験では最高60%水溶液(質量モル濃度換算で約4.25 mol/l)までフォローしてますけど、水のモル凝固点降下が1.85℃(1モルの溶質が溶けているときの凝固点降下、単位;K・kg/mol)であることを考慮すると、最高濃度でも-18度まで凝固点が降下することはない。つまり、最高濃度でも固体である。
ただし、メタミドホスが水中でn分子解離していると、上の最高モル濃度は4.25xn mol/lとなり凝固点が-18℃以下に下がって、-18℃でも液体状態を保つ可能性があります。

それから他の材質条件ですけど、まずPETの場合、PPよりも高表面張力材料ですが、メタミドホス水溶液のそれより低い可能性は小さいこと(を上回る可能性は非常に小さいこと;3/3 修正)と、低温で脆性(脆い性質)が出るため、低温包装用途にはあまり使われないことを併せれば、これを使って浸透性が発現した可能性はほぼ除外しても良いでしょう。勿論、上のによっても否定できます。

そして、非蒸着系材料の場合もPPならば、上記、によって否定できますし、上記後者の理由で単独でPETを使うことはまず考えられないため、これも否定できます。

次に、気体状態での浸透(透過)ですが、上の20℃においてさえ極めて低い蒸気圧、さらに実験温度が-18℃であることを加味すれば、これはもう確実に透過して食品に付着することはないでしょうね。

と云うことで、考えられるほぼ全てのケースでメタミドホス水溶液が包装材を浸透・透過して食品にまで達することは無いと言えます。

一応、フォローのため、中国での実験で浸透があったケースを、意図的かどうかを予想して以下に書いておきます。

A.純品のメタミドホス以外、例えば、アセフェート(水に溶かすとメタミドホスを生成する)を実験に使った場合、不純物及び未反応物の内容や量によって腐食性や通常条件では発生しない特異的な触媒作用により浸透性が発現した。そして、腐食性による材料の変質や特殊な不純物の組成を隠しているケース(メタミドホスが軟鋼や銅を侵すという報告もあるようです)。

B.メタミドホスを浸透させるためだけに、包装材料に対して非常に強い相互作用をもつ溶媒(トリフルオロ酢酸のような強烈なポリマー溶解作用をもつもの)を使い、それを隠しているケース。

C.実験後、包装材内側から成分を拭き取る際に、ただの操作ミス或いは清浄管理不十分で材料表面のメタミドホスが混入したケース。

D.あとは上の方でも述べましたように、メタミドホス水溶液に対して、より親和性のある包装材を使って無理矢理浸透性を発現させた(例えばPETより”濡れ”の良いものとか)。

まぁこれくらいでしょうか。
どのみち、上記ならば、日本にバレた時点で終了です。
それ故、実験資料の詳細を出し渋るでしょうね。
現時点で、メタミドホスが中国国内で混入した可能性を相当な蓋然性をもって疑うのは、以下を見ても明らかです。

残留農薬違反事例検索結果(メタミドホス)・・・ブラジル、フィリピンを除いて、残りは全部中国です違反した国はもうひとつ、台湾もありました。それに上をクリックすると、不正アクセスとか何とか・・・ここから農薬”メタミドホス”で検索して右上の”違反事例”をご覧ください;3/2追記


それでもう一つ忘れてました。中国を擁護するわけではありませんけど、不純物成分が純品以外のメタミドホスで世界共通だろう、ってのには同意します。製法が同じなら、大抵は不純物や未反応物は似たようなものになるはずで、純品以外の当該商品を見分けるのは相当に困難であることは確かだと思います。
ただ、これが中国以外の第三国を犯人に仕立てるためのイヤらしい誘導であると観た福島香織記者の読みにも同意しますが・・・。

最後に、今回の中国側が行った発表の意図と云うか動機の裏に、切迫した経済的事情があることはこのエントリーの中でも最も確定的な要素でしょうね。
これについては、青木直人氏の最新エントリーをお読み下さい(毒入り餃子の経済学)。

更に最後に、「(中国側は)これからも日本と共同して、しっかり調査したいということを言っていたのではないか。非 常 に 前 向 き だ」とな・・・前向き・・・福田さん、冷静と云うよりも現実逃避でしょうね。

以上です。


附録:Supplement

毎日元気!」と云うブログのエントリー”包装材に対する不安 ”に、以下のことが述べられていました。

「今回問題のメタミドホス系のものは浸透力が強く、
包装材の外側に付着していても、内部まで浸透し
毒性が移ることがある。
過去にドイツ(だったはず)でパンを食べて、同様に
中毒症状が出て、原因を調べてみた。
ある運搬用トラックが農薬を運んだことがあり
そのトラックで運ばれた小麦粉を使ったパンがその時の中毒の元となる
パンであった。という症例もある。」

という内容・・・。

その話から、次は、ある機関が包装材の浸透性について実験を行ったという。
通常、問題になった中国製餃子の包装に使われているようなものは
水の浸透はしないが、メタミドホスのようなタイプのものは実際に
多くはないが浸透したことは事実。  だとか・・・


どこのワイドショーだったのかはちょっと分かりませんね。その専門家の言う前半のパン小麦の話しですけど、これと今回のケースを同列に見るべきでは無いと思います。
何故かと申しますと、メタミドホスは極性の強い物質ですから、浸透性も強いのはその通りですが、これは主に人間の皮膚のような親水性の多孔性表面に対する言葉です。一般に冷凍食品包装材のような疎水性表面には通常適用できません。
例にあるように、トラックで農薬と小麦が同居することで農薬成分が小麦に移ったのだとしたら、小麦の包装材が例えば紙のような高い吸水性の多孔性材料だった可能性が大です。尤も、その包装材の材質が書いてありませんので、何とも言えませんが・・・。
それと、後半の”ある機関”とはどこのことでしょうかね。この機関が行った検証実験の詳細を聞いてみたいです。
あっ、別にこのブログ主が怪しいと言っているわけではありませんので、誤解無きようお願いします。



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海洋生態系に及ぼす人為的影響-テクノバーン記事より


ほんのちょっと古いが、テクノバーンに以下の記事があった。

国際研究グループ、最も環境破壊が進んだ海域は日本海と北海

生態系に与える環境変化などの観点から全世界の海域を対象に行った調査・研究の結果、地球上でもっとも環境破壊が進んだ海域は東シナ海から日本海にかけての海域と北海のイギリス・スコットランド東岸の海域であることが14日、全米科学振興協会(American Association for the Advancement of Science)での研究発表により明らかとなった。

この研究発表を行ったのは米生態学の分析と総合に関するナショナルセンター(National Center for Ecological Analysis and Synthesis)のベンジャミン・ハルパーン博士を中心とする国際研究グループ。
(後 略)


ふむふむ日本海ね、まぁ確かに汚れてるんだろうなぁと思って元記事をあたってみたら、当該人為汚染海域は日本海と云うより南シナ海から東シナ海、そして対馬海峡だった(下のグローバルマップ参照)。
GlobalMap.jpg

中国はこれを見て反省しる!

我々ごときではなかなか載っけて貰えない「サイエンス」が元記事(Science 15 February 2008: Vol.319. no.5865, pp.948-952)。

Reports:A Global Map of Human Impact on Marine Ecosystems
世界の大洋のいたる所に人間の影響あり(上の日本語解説記事)

簡単に要約すれば、筆頭著者のDr.ハルパーンらが様々なソースから割り出した17の人為的汚染活動(ドライバー)を”Predicted cumulative impact scores(予測累積影響スコア、Ic)”と云う数字で表し、それが20の海洋生態系にどう影響しているのかを、地球上の海域を色別にマッピングすることで明らかにした結果を報告したものらしい。

この報告では、17種のドライバーの元になる人為活動は二大別でき、陸地ベースの活動は沿海に汚染物質や富栄養化物質の流出をもたらし、生息環境を減らし、変質させ、或いは破壊する。もう一つの海洋ベースの活動は資源を抽出して、汚染を加えて生息種の構成を変えてしまう、と書いてある。

------
Land-based activities affect the runoff of pollutants and nutrients into coastal waters and remove, alter, or destroy natural habitat. Ocean-based activities extract resources, add pollution, and change species composition.
------

こうした17種のドライバーによって算出されたIcの最も高かった(Ic>15.5)のが上の海域と云うことで、その他にも以下の海域が”Very High Impact”らしい。

------
North and Norwegian seas(北海及びノルウェー海), Eastern Caribbean(東カリブ海), North American eastern seaboard(北アメリカ東岸地域), Mediterranean(地中海沿岸), Persian Gulf(ペルシャ湾), Bering Sea(ベーリング海), and the waters around Sri Lanka(スリランカ周辺)
------

対馬海峡(Tsushima Straits)は小さいので此処では言及されてないが、上図を観ると、”the Japanese waters(日本近海、(D))”として分類されている。
確かに日本近海には違いないし、本文でも”South and East China seas”と書いてあるので別に意図はないだろうが、何か日本がメインで汚しているみたいでイヤだなぁと。

これに関して、テクノバーンの記事タイトルは微妙で、日本海と言い切ってしまうと明らかに間違いであり、こちらも変な意図はないだろうが、この領域(南・東シナ海)を人為汚染しているのは明らかに中国であることをもっと強調して欲しかったなぁとネトウヨな私は思うのであった(Dr.ハルパーンらの報告は学術報告なので、警告があくまでグローバルなものになるのは当たり前だが)。

しかしこのグローバルマップ(上図)は東シナ海辺りがちょっと見難いなぁと思っていたら、ココ動画があったので該当部分だけをキャプチャーしてYouTubeに上げてみた。

The reality of the marine pollution in the suburbs of Japan


しかし、図のD領域やこの動画をよ~く観ると、日本の海岸線に沿ってナローではあれど、結構赤くなっているのを見て取れるので人の悪行ばかりを攻めるのも何だな?とは思うが、いわゆる日本海自体が高度な汚染に曝されてないのにはちょっと安心した。
それを思うと、尖閣諸島以西の東シナ海の人為汚染は酷いなぁと・・・こりゃ越境汚染は餃子だけにしてくれとは間違っても云えない。

まぁ対馬海峡に関しては、韓国と日本の共同責任と云うことにしておきましょう。
しかし、このIcと云うスコアには暖流とかのファクターは考慮してないのかな?
対馬暖流は日本海に流れ込んでいくので日本海がもっと汚れてもいいはずなんだけど、その辺りはどうなんだろう。



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納豆がないよ~


ジワジワとランキングも下がってきたようですので、たまには政治とは殆ど関係のない気軽な話題を一つしてみます。何だよ~と云う方には大変申し訳ありません(次は書きますね)。

最近、常食にしている納豆が売り切れてて非常に困ってたんですが、犯人はまたあの番組でしたか(「あるある~」で納豆「ないない」おわび広告掲載 )。
あの手の番組はここのところ余り見ないものですから、どうしてスーパーの納豆コーナーから綺麗サッパリ消滅してしまっているのか見当がつきませんでしたよ。
以前も、あの番組のお蔭でココアが品薄になったりしてましたよねぇ 確か。

”食べてダイエット”と云うキーワードには魔法の響きがあるようです。現在、BMI値 22・体脂肪率 13~17%の筆者にとってはそれ程呪文のような言葉ではないんですけど、電波メディアの宣伝効果って凄まじいものがありますね。まぁすぐに沈静化するのも、この種のメディア効果の特徴の一つですけど・・・

筆者の場合、ただ好き&美味しいから食べてるんですけど、血液サラサラ効果とか整腸作用を多少は意識してるのは否めません。
筆者は納豆の生理作用については余り詳しくはないのですが、納豆から造ることの出来る樹脂については専門上、多少知ってますので簡単に述べてみたいと思います。

納豆を混ぜ捏ねるとネバネバの物質が出来て糸を引くようになりますよね。あれは納豆菌が分泌するムチン質と云う糖タンパクの一種で、分子量が数百万以上のポリマー(高分子)なんです。ただ、あのままでは粘性をもった流動物ですし、タンパクですから熱で駄目になってしまいますので、ムチン質を精製したγ-ポリグルタミン酸(PGA)と云う物質に架橋(橋架け)と云う化学反応を行わせて分子同士(分子間)を立体網目のような構造体にする必要があります。

この処理を行うと、いわゆる樹脂と云う粉体状の物質になります。この樹脂は何と云っても天然物由来の物質ですから全くの無害で、今流行の生分解性(土中などの微生物作用で分解する性質)を持っていますし、強烈な吸水性も兼ね備えてます。
納豆樹脂は、これらの性質を利用して砂漠緑化などのプロジェクトに応用され始めてます。

納豆樹脂を製造する過程に於いて、先程、架橋と云う化学反応を行わせると書きましたが、この反応を生じさせるには放射線であるガンマ線電子線(エネルギーによっては放射線になる)を照射する必要があります。
ここで面白いと云うか、科学的な常識の軌道から可成り外れた苦労話があるそうです。

ガンマ線はご存じのように、非常に波長の短い高エネルギーな電磁波で照射された物質に強い相互作用を及ぼします(一般にX線より強烈です)。この強烈なエネルギーでPGA分子の一部をラジカルと云う活性の大きい分子種に変えて、それがお互いにくっついて(結合して)橋架けが進行していくのですが、そのエネルギーをもってしても、架橋が十分行われるのに十数時間もかかります。これは製造コスト面から観て非常に問題です。

そこで、電子線を照射してみようとなったわけですけど、通常、電子線はこの種の架橋反応には殆ど効果がないとされてました。と云うのも、普通は電子線はガンマ線よりエネルギーが低く、また作用機序も異なるため、ガンマ線でも十数時間もかかる反応が進行するはずがないと常識的に思われていました。

ところが、電子線を照射すると、あら不思議!!、たったの数秒で架橋が終わってしまいました。やってみるもんですねぇ・・・とその研究者(その理由を説明すると長くなりますし、詳細ははっきり云って未だ分かってないかもです)。

そうなんです!、何事もやってみないことには分からないんです(Let's Begin!)。我々のもつ科学の常識なんてこの程度のものなんですよ(奢っちゃいけません)。
科学の発見なんてものは、所詮はこうした類例の上に積み重なってきたものなんですから・・・化学はとくにその種の事象が多くあります。
確か、ノーベル賞の田中さんの研究も失敗から生まれた成功例でしたよね。
勿論、綿密な推定から為される研究や発見もあるわけですけれども、こう云うのがあるからサイエンスは面白いとも言えるのです。

政治的問題も、非常識を敢えてやってみると云う勇気が必要なときもあるかもしれませんね。まぁ無限に近い人間の感情や思惑が入り込む問題に上記を当て填める方がよっぽど非常識だったりするんでしょうが・・・難しいですね 政治問題は。

ところで、筆者の好きな「おかめ納豆」はいつ頃、手に入るようになるんでしょう?、切実に困ってるんですけど・・・



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学位製造工場(ディプロマミル)


散歩道さんのエントリーを観て反射的かつ備忘録的に、このニュース(でたらめな論文で米大学の博士号…33人摘発)についての感想を書いておきます。
仁川地方警察庁は18日、米国ロサンゼルスのP大学にでたらめな論文を提出し、博士学位を取得した33人を摘発、このうち現役および元教授3人、英語スクールの院長1人、事業家2人、芸術系関係者2人を立件した。
また、海外在住または控訴時効(5年)が過ぎた軍法務官、公務員、教授など残り25人のうち、教授4人に対しては該当の大学が処分するよう通達した。

 ソウル某大学の教授であるコ某容疑者(42)は、2003年P大学に入学金と授業料として1万ドルを支払い、3カ月間にインターネットで60単位を履修したあと、既存の論文を組み合わせただけの論文を提出し、博士学位を取得した。博士学位取得まで計半年しかかからなかった。
忠清北道の某大学教授のキム某容疑者(38)も同様の手口で2004年に博士学位を取得し、大邱の某大学の教授だったイ某容疑者(45)も1991年に同じ手口で学位を取得したことが分かった。このほかに立件された容疑者は、1992年12月から2004年7月までに700万-1000万ウォン(約86万円-123万円)を支払い、工学・経営学・文学分野の博士学位を取得した疑いが持たれている。

 警察は「容疑者らのほとんどはP大学に通ったこともなく、自分の名前で書いた論文の内容も知らなかった」とし、「自分の学位論文の題名を英語で書くことすらできない人もいた」と話した。
また、「米国の会計検査院(GAO)はP大学を“ディプロマミル(英:diploma mill、証書工場の意)”に規定しており、米国大学認証機関(GAO)にも登録されていないことが確認された」とした。仁川警察庁のキム・ホンギ捜査2係長は、「海外で博士学位を取得していない場合、韓国で大学教授になることが難しいことから、このような方法でも博士学位を取得しようとする人が多い」と説明した。

このディプロマミル問題は少し前にNHKの特集で見たことがあります。
日本でもP大学ではないですが、I大学なんてのがありますね、某有名UFOディレクターが教授やってたとこですね。今でもやってるんですかね?もっと昔には、特許大学なんてのもありました。
これらの大学は日本で云えば、文科省の認定した大学ではありませんので、当然ながら、そこで得た学位もフォーマルな学位として認定されません。
日本にも、Dr.○パとか、ドクター○松とかの怪しい学位持ちがいますので、偉そうなことは言えませんが、韓国の場合はもっと深刻ですね。

> 「自分の学位論文の題名を英語で書くことすらできない人もいた

これは笑うとこですか?、まさかこれに当たる人は太字で示した某大学の教授じゃあるまいな・・・、そうだとしたら、子供銀行ならぬ子供大学だなぁ。

そういやぁ、日本の有名大学の先生にも、確かI大学で学位を取ったのがいたと聞いたことがあります(真偽は分からず)。現在はちゃんと母校で「工学博士」を取得されていますが、元々そうだったのかは定かではありません(ヒント、エジプト・・・)。
因みに、日本の大学で正式に博士学位を取ると、それが1984年以降なら「国立国会図書館 蔵書検索・申込システム」で検索できるはずです(1983以前も一部検索可)。ただし、ここで検索可になるのは学位論文を提出後、大体一年程度かかります(筆者の場合、一年以上かかりました)。

しかし、大学教員が多いですね。韓国は日本以上の学歴社会らしいですが、こんな教授のいる大学に行っても意味がないような・・・日本もすでに実質、大学全入時代に入ってますから、同じことが云えますが、ここまでは酷くないと思いたいですね。

こういう商売が未だに流行るというのは、博士学位にステータスが残ってるんですかね。学位は正式には「Degree」であって、「License=資格」ではありませんが、実質的にはライセンスの一つに過ぎません。でも、それだけでは食えないことは今も昔も余り変わりません。
学位を「足の裏に付いた米粒」とは、実によく云ったものです。そのココロは・・・「取らないと気持ち悪いが、取っても食えない」、ご存じの方は多いと思いますが一応。

↓ここからはどうでもいい解説ですので、敢えて読んでいただかなくても結構です。

日本の場合はちょっと特殊で、正式な学位取得方法が2種類あります。これ以外の方法で取った学位は全てインチキ学位です(ここで云う大学及び大学院は文科省の認定したものを指します)。

一つは「過程博士(コースドクター)」でこれは欧米と同じ方法です。大学院の博士後期課程に在籍して所定の単位を取得後、博士論文を提出して学位を取得しますが、大抵の場合、博士論文を構成する章には査読(審査)のあるジャーナル(大抵、英文)に投稿した論文を充当する必要があります(コースの場合は大学によっても異なりますが、平均三報程度)。

もう一つは「論文博士(ペーパードクター)」で、日本独自の取得方法です。大学院を経ないで、上記の論文投稿のみで学位を取得する方法です(実は私も・・・)。とは云っても、この場合に要求される論文数はコースよりも当然シビアで最低でも筆頭著者(ファースト・オーサー)の論文が五報以上を必要とする大学が多いです。それと、大学院の後期課程に相当する学力認定試験があります(尤も、形ばかりの場合が多いですが・・・)。

後者の方法はもうすぐ無くなるようです、欧米のシステムに合わせるため、社会人コースの大学院が整備されてきたため、とか云われてますが、実際は大学院の授業料収入を増やすこととその存在意義の堅持が目的なのだと思います。



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エネルギー問題の本質


ガソリン価格がまた上がりましたね。筆者も車通勤ですので,このところの持続的値上げは非常にイタイです。
さて,ガソリンと云えば石油ですが,その昔,つい30年ほど前(1970年代)には原油の埋蔵量(可採年数)はあと30年なんて云われてました。計算すると,もう枯渇してもおかしくない頃なんですが,無くなるなんて話は聞きませんね。以前に,てっくさんは”原油はなくならないよ”というエントリーをアップしておられました。それに依ると,現時点での可採年数は49年なんだそうです。しかも,年々それは増えていると・・・(ホント?)。まぁ実際は経済的,技術的側面を加えた数字のマジックらしいのですが,どちらにしてもあと半世紀くらいは大丈夫のようです。
その間に何とか別の高い効率をもった代替エネルギーを開拓しないことには,人類は今のような高エントロピー生活を維持できなくなることは確実です。この種の問題は本来,政治的話題よりも優位にくるべき課題なんです。エネルギーが無ければ人類はなんの生産活動もできないわけですからね。
しかし,このエネルギー問題には現時点の科学では,どうしようもなく越えられない壁があります。この壁がエネルギーというものの本質なんですが,この辺りについては”晴耕雨読”さんが精力的に取り組んでおられますので,このエントリーを参照していただきたいと思います。

エネルギーというものはご存じのように質量(物質そのもの)と等価なのですが,熱力学の法則という巨大な障壁があって100%の効率でそれを取り出すことはできません。この効率のことを,エネルギー変換効率と呼びます。これがエネルギー問題第一の障害です。理系の方ならご存じのことと思いますが,熱力学の法則は実存する全ての事象に否が応でも関わってくる原則で第一法則から第三法則まであります。晴耕雨読さんでも解説されていますが,それとはちょっと違った説明をしてみたいと思います。
シンプルに纏めると,

第一法則では”エネルギーの変換効率は絶対に100%を越えることはなく,よくてトントンである”ことを規定しています。
第二法則では”そのトントンが達成されるのは絶対零度(約-273.15℃)においてのみ可能である”ことを規定しています。
第三法則では”絶対零度には絶対に到達できない”ことを規定しています。


要するに,エネルギー変換効率が100%のものはこの世に存在しないと云うことです。エネルギーの発生には例外なくロス(熱散逸)が生ずることになり,それは再利用する毎に増え,ついにはその資源から何のエネルギーも得られなくなります(エントロピーが増大すると云います)。
唯一,エネルギー変換効率がほぼ100%のものに”物質(マター)-反物質(アンチマター)の対消滅”という現象がありますが,これはもうスタートレックの世界なので止めておきます(笑)。

じつは,この反物質を作り出すのに必要なエネルギーはその反物質によって得られるエネルギーよりも遙かに大きいことがエネルギー問題第二の障害になります。この効率のことを,エネルギー利益率(EPR= 得られるエネルギー/必要なエネルギー)と呼びます。実質的には,これからの代替エネルギー問題にとってはこのEPRの方EPR.gifが重要です。
この値が1以上ないと,エネルギー開発は徒労に終わり無意味になります。図に各種エネルギー資源のEPRを示しますが横軸の輸送効率も考慮すると,如何に現在の石油資源のEPRが高いかよく分かりますエネルギー基本戦略に関する調査報告書より)。
つまり,そんなに簡単に効率の良い代替エネルギーなど見つからないことを示しています。この図にはありませんが,よく話題になるメタンハイドレードは1を切る値(約0.98)だと云われておりますので,今のところは無意味なエネルギーと云うことになりますね(なんか勿体ない気がします)。ただし,このEPRは上述の変換効率よりも技術的進歩に依存しますので,それによってある程度,値を増加させることは可能です。



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お上の言い分

新年明けましておめでとうございます.

今年も宜しくお願い致します.

といっても,未だ読者の方は少ないですが・・・一応,ご挨拶申し上げます.

しかし,今年はよく雪が降る.筆者の地方も50数年ぶりなんてドカ雪が降ったりして結構鬱陶しい(雪が降ると小躍りしてた時代が懐かしい?♪).地球温暖化が進行しているなんていっても,実際に順当に寒い冬が来ると,素人ながら本当にそれが影響してるのか疑いたくなる.まぁ,最近の世界的な異常気象をみると,正常な気象独楽の回転がブレ始めているのは間違いないようだが,実質的には寒冷化と温暖化が適当な周期で交互に到来しているような感がある.

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バタフライ・イフェクト

実は私,『ムー』の定期購読者でして(少し恥ずかしい),12月号の”謎の時間旅行者 ジョン・タイター”という記事を久々にマジで読んでしまいました.
トンデモと言われようが,その分水嶺さえ分かって読んでれば面白いジャンだけで良いんですよ.まぁ サイエンティストの末席を汚している身としては,あまりヘンなこと書き込めないんですが・・どうせ汚してるんだから良いのか.
ジョン・タイター事件は当時(2000年位から),結構アメリカのネット界じゃ有名だったらしいですね(全然知らなかった).記事によると,彼は以下の理由で現世(この時間軸)に来てたそうです.

タイターは近未来の「アメリカ連邦帝国」陸軍軍人で政府のタイムトラベル計画に選抜された8人のひとりだという.8人はそれぞれ別のミッションを与えられ,タイターの任務はまず1975年に飛んで”核戦争後の荒廃世界”のインターネット再構築に不可欠な初期コンピュータ機器を入手することだった.
「月刊ムー 12月号」

あのぉ 別にコンピュータ機器って複製不能な文化財じゃないんだから,タイムマシンが作れるんなら過去データからそんなもん作れるだろうがぁ っていう突っ込みは無しっていう方向でお願いします.
近未来というのは2036年だそうで,2001年3月に消えるまでに残した予言は次のようなものだったようです.

1.実現した予言
・イラクが核兵器を隠しているという理由で第2次湾岸戦争が起きる。
・アメリカ国内にも狂牛病が発生する。
・中国人が宇宙に進出する。
・新しいローマ法王が誕生する。

2.まだ実現していない予言
・世界オリンピックは2004年度の大会が最後になり、2040年度にようやく復活する。
・アメリカの内戦は2008年に全面化する。
・その直後、アメリカ初の女性大統領が誕生する。
・中東の国同士で大量破壊兵器が使用される。
・アメリカやヨーロッパ諸国の不安定化に乗じて、中国は覇権主義を強め、台湾、日本、韓国を強引に併合する。
・2011年、新世界政府が誕生する。
・2015年、全面核戦争が勃発し、30億人近くが死に、世界の人口は半減する。
・2020年、アメリカに新憲法が制定される。

(「新科学と健康と雑学」さんより)

 

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