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アーカイブ: 2006/08/08
靖国神社に関する麻生私案について
- 2006.08.08 Tuesday
- Misc.Impressions
先日より色々と誤解釈を受けたとされる麻生外相による靖国私案「靖国に弥栄(いやさか)あれ」が正式にHPに発表されました。
これに関する詳細は”てっく”さん辺りが正確な分析をしていただけることでしょうから,筆者は一点についてのみ感想を述べてみたいと思います。
結局のところ,麻生さんもやはり良くも悪くもリアルな政治家だなという印象です。どういうことかと云うと,決して「政教分離原則」の解釈にイチャモンつけないんですよね。そしてそれから逃げようとする。麻生さんなら,その辺りのことに突っ込んで欲しかったなぁと。
現宮司の南部氏が「靖国はいずれ国にお返しするもの」と言われているそうですが,これが何を意味するのか,よく理解しなければならないと思います。靖国神社は戦後,宗教法人に謂わば”いやいや”なったのですよね。そうでなかったら原形は存続できなかった。確かに,戦後61年の間に様々なものの価値観は変わりましたが,靖国本来の精神は変わるはずもありません。であるならば,”国へ返すという行為”は戦前と変わらぬ靖国神社の精神が担保されてなければならないと思います。
南部宮司が単純に現状の法解釈における「国家」にお返しするという認識であるのなら,麻生私案や中川秀直案のどちらでも実現する可能性はあるでしょう。しかし,筆者は南部宮司がそのような意味合いで発言したとは考えてません。
南部宮司の2代前の松平宮司は何度も引用して恐縮ですが,”誰が御霊(みたま)を汚したのか”の中で次の宮司への申し送りとして以下のことを固持するようにと仰いました。
靖國神社というのは決して平穏な神社ではありません。政治的に非常に圧力のかかる神社です。それは左からの圧力だけではなく、そうでないところからもかかってくる。一見〃愛国〃〃憂国〃を装った形でもかかってくる。だから、ともかく権力に迎合したらいけない、権力に屈伏したら、ご創建以来の純粋性が目茶苦茶になってしまう。権力の圧力を蹴とばして、切りまくる勇気をもたないといけない、ということを、次の宮司への一番の申し送りにいたしました。
「富田メモ」騒動に起因して,ある方向では松平元宮司と先帝陛下との間に合祀に関する齟齬があったのでは?とする説があるようですが,上記を読む限り,少なくとも筆者は陛下の御心に背いたような考えを松平氏がもって行動したようには思えませんでした。
それで,”ご創建以来の純粋性”とは何を指すかと云うことになりますが,これは同文の上の方に答えがあります。
もう一つ、宮司になった以上は、命がけで神社を御創建の趣旨に違わず、また本来の姿で守ろうと決意したのです。
断じて譲れないことが三点あります。
まず、日本の伝統の神道による祭式で御霊をお慰めする。これが一つです。
第二に、神社のたたずまいを絶対に変えない。われわれは「靖國で会おう」「靖國の桜の下で再会しよう」と誓い合って戦地に赴いたのです。そのときのお社の姿、現在の姿ですが、これを変えるわけにはいかない。たとえ何百億円寄進するから日光束照宮のような壮麗華美な社殿にしてくれといわれても、絶対に肯けない。
このたび、御本殿も全解体修理しましたが、私が固く言い渡しましたのは、これは「改修」ではない、「修築」なんだと。板の一枚、柱の一本にいたるまで砂擦(すなず)りをして綺麗にしてもらっては困る。布で洗うだけにしてほしいと。御創建以来、百数十年経っていますので、雨漏りで腐ったようなところが多少はある。そこだけ新しい部材を補充し、大部分は御創建当時の材料でガタの生じた所を締めつけて再建したわけです。御本殿と回廊と拝殿は神社の重要部分、中心部分です。この姿はどうあっても変えない、それが第二の決心でした。
第三に、社名を変えない。当り前だと思われるかもしれませんが、「靖國廟」にしろという意見も以前からあったんですね。しかし初めは招魂社、明治十二年に明治天皇様の思召によって「別格官幣社 靖國神社」となった。この社名はどんなことがあっても変えられない。そういう方針で臨んだわけでございますが、就任早々、「国家護待」反対を唱えたのと、いわゆるA級戦犯を合祀したので、大変な攻撃を受けることになりました。
この三つのうち,第一と第三は重要でしょう。とくに第一の「日本の伝統の神道による祭式で御霊をお慰めする。」は絶対に外せないでしょうね。
これらのことは松平→湯澤前宮司と申し送りされてきているはずなので,当然,現宮司である南部宮司はこれを尊重されることでしょう。この仮定が成り立つとすれば,基本的には”非宗教法人化案”は靖国本来の意にそぐわないことになります。
麻生私案も基本的には”非宗教法人化案”になろうかと思いますのでアウトです。麻生氏は宗教法人としての靖国を自主解散させた後,どのようにして神道形式による祭式を行わせるようにするのでしょうか。どうも移行過程において「設置法」を作って特殊法人化させ,その「設置法」によって「宗教行為」を「伝統行為」と見なして逃げ切るつもりのようです。
神道は日本伝統の慣習でもあると言い換えはできますが,やはり宗教行為という枠から解放されるわけでもないように思います。国立の非宗教追悼(慰霊)施設案などは論外なのですが,筆者はそもそも亡くなった方々への追悼・慰霊行為というのは宗教行為以外の何者でもないと思っていますので,靖国の全ての祭式を伝統行為に振り替えるには可成り抵抗があります。要するに,これは「政教分離原則」の限外解釈でしかないと考えます。
また,それに靖国側が積極的に応ずることは難しいのではないでしょうか。第一,説得すると云っても,この行為自体が大きな政治介入なってしまう恐れもあるわけで,そのように見せないためにはスムーズで自然な流れを作ることが優先されるべきです。そのためには靖国側の大原則を第一義とするのが最も確かな方法でしょう。
やはり,ここは正攻法でいって欲しい。靖国神社としての望みが国家護持に行き着くとすれば,この「政教分離原則」自体の解釈を根本から改めることだと思います。できることなら神道を国教に定めて欲しいところですが,それができないとしても,靖国における祭式一式を「政教分離原則」に従わなくとも良いとする国家唯一の特例的措置を成立させていただきたいと考えます。この互が外れさいすれば,天皇陛下のご親拝が公的だの私的だのといった下らない議論からも解放されます。
今の風潮はできもしない分祀論などで盛り上がるレベルですから麻生私案にしろ,上記にしろ,達成までの困難さにおいては同じことでしょう。とすれば,靖国の本質に依拠した真摯な議論と措置を行うべきだと思います。中途半端な法解釈は余計に後に遺恨を残し,また(中・韓のような)外野からの干渉も新たに作り出してしまう可能性だってあります。それゆえの正攻法なのです。
今はこうした素地を作るためにも,国家の最高責任者は中・韓の批判など何処吹く風で素通りし,できもしない分祀論などにも耳を貸さず,堂々と靖国に慰霊へと向かうだけ良いのではないでしょうか。
昨年,麻生氏は外相就任時に以下のことを言ってます。
「普通にお参りします。韓国や中国にいくら言われても、泰然自若としていればいい。彼らが『これ以上、この問題を言い立ててもしょうがない』と悟って、自然に丸く収まるのが、一番理想的な形でしょう」
麻生さんはこの気持ちを忘れないでいただきたいと思います。泰然自若として靖国への道を造る,筆者はこれが何よりの近道だと思いますよ。
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